現時点で、パチンコを行うこと自体により認知症や要介護状態を予防できる、ADLや身体機能が改善する、といった因果関係が当社製品について確立しているわけではありません。 一方で、一般的な介護予防では身体活動だけでなく、本人の興味に合う活動や社会参加も重要な視点です。 本記事では、一般的な介護予防の根拠/パチンコに関する研究/当社施設での観察データを分けて扱います。 当社の現場データは 現場データ・施設アンケート で母数・欠損値・限界とともに公開しています。
1. 認知機能|「注意を使う」と「認知症予防」は分けて考える
パチンコでは、画面や玉の動きに注意を向け、状況を見ながらハンドルを操作します。しかし、こうした課題を含むことと、認知機能の改善や認知症予防が証明されていることは同じではありません。 パチンコ遊技中の反応や脳活動を扱った報告があっても、対象人数、比較条件、測定時間、長期追跡の有無を確認する必要があります。短時間の検査値や脳活動の変化だけで、長期的な介護予防効果を結論づけることはできません。
一方で、介護予防では「心身機能」だけでなく「活動」と「参加」を含めて考える視点があります。本人が関心を持てる活動としてパチンコを試す場合も、認知機能改善と決めつけず、参加時間、会話、再参加意向など、実際に観察できる項目を記録します。
この考え方を現場目線でやさしく整理した記事として、 パチンコは機能訓練になるのか? も参考になります。
2. 手指・身体活動|動作があることと機能改善は同じではない
パチンコでは右手でハンドルを握り、微妙な角度や力加減を保ちながら操作します。 この操作には、握る、角度を調整する、一定時間保持するという要素があります。ただし、通常のハンドル操作だけで握力や巧緻性、食事・更衣などのADLが改善すると断定することはできません。
当社の機能訓練用パチンコでは、握る・踏む・こぐ・回すなどの専用器具を遊技と組み合わせ、通常のハンドル操作とは別の身体活動を設定できます。実証や評価を行う場合は、使用器具、実施時間、回数、休憩、疲労感、姿勢、介助量などの条件をそろえて記録し、必要に応じてパチンコあり・なしを比較します。
4. 楽しさ・継続性|「続いたか」を実際の記録で見る
運動や活動は、一度行っただけでは継続的な変化を評価できません。パチンコのゲーム性や親しみやすさが参加のきっかけになる人はいますが、全員が楽しめる、必ず習慣化するとは限りません。過去の経験、好み、音や光への反応、認知・身体状態には個人差があります。
「楽しそうだった」という印象だけで終わらせず、参加の有無、実施回数、継続時間、中断理由、楽しさ、疲労感、再参加意向を記録します。運動能力を評価する場合は、同じ器具・負荷・時間での回数や介助量などを継続して測り、単なる遊技回数の増加と身体機能の向上を分けて判断します。
パチンコを施設活動として使うメリット・注意点は 介護レクリエーションにパチンコを活用する5つのメリット でも整理しています。
5. 自社の現場データで確認できること
当社では、短期デモ施設の利用人数・利用回数・複数回利用・職員評価などを集計しています。 これらは研究結果ではなく、施設から報告された小規模な現場データです。
実利用者84名・延べ約285回。人数と利用回数の両方が確認できる4件を集計しています。
短期デモ5件の施設自己申告では、5件とも「変わらない」という回答でした。
この数字から、認知症予防・身体機能改善・安全性を証明することはできません。 母数、欠損値、集計条件、読み取れないことまで 現場データ・施設アンケート で公開しています。
個別の施設でどのように使われたかは 実際の施設事例 で確認できます。
6. 現時点の限界|まだ「効果」として断定できないこと
現時点で説明できるのは、パチンコを使う活動に注意・手指操作・会話・活動参加などの要素が含まれ得ること、専用器具を用いた場合に運動回数などを記録できることです。認知症予防、ADL改善、身体機能向上、ストレス軽減などの医学的・長期的効果は、当社製品について確立していません。
そのため、実施時間・運動回数・疲労感・楽しさ・また利用したいか・姿勢・介助量など、実際に記録できる項目を先に決めます。実証で条件差を見る場合は、可能な範囲で器具・時間・負荷などの条件をそろえて比較します。
7. 現場での評価・記録チェックリスト
- 目的を決める:楽しみ・交流・身体活動・運動回数の確認など、何を見るかを先に決める
- 設置条件:音・必要スペース・配線・車いすや椅子の位置を事前に確認する
- 安全管理:台の安定、玉の扱い、見守り、中止基準を施設内で共有する
- 記録:使用器具・時間・回数・休憩・疲労感・楽しさ・また利用したいか・姿勢・介助量を確認する
- 比較:実証で条件差を見る場合は、可能な範囲で器具・時間・負荷をそろえる
- 中止基準:痛み、息切れ、めまい、強い疲労、不安・拒否などがあれば中止し、施設の手順に従う
8. 参考にした公的資料・研究
- 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針」
- 厚生労働省「介護予防マニュアル 第4版」
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- 厚生労働省「地域がいきいき 集まろう!通いの場」
- 日本公衆衛生雑誌「高齢者の趣味の種類および数と認知症発症:JAGES 6年縦断研究」
ここに挙げた資料は、介護予防・身体活動・社会参加に関する一般的な根拠を確認するためのものです。当社製品やパチンコ固有の効果を証明する資料ではありません。
目的と評価項目を決めてから試す
導入前に「楽しみ・交流を確認するのか」「専用器具の運動回数を測るのか」など目的を決め、 同じ項目を継続して記録すると、自施設で合うか判断しやすくなります。
3. 社会参加・会話|交流のきっかけになるかを観察する
大当たりやリーチ演出をきっかけに、周囲の利用者様や職員との会話が生まれる場合があります。 ただし、設置しただけで交流が増える、孤立が解消されるとは言えません。本人が参加を望むか、周囲との会話があったか、見学・応援など別の参加方法があったかを観察します。
社会参加と健康・介護予防の関連を扱う公的資料や観察研究はありますが、特定の活動であるパチンコの予防効果や因果関係を示すものではありません。パチンコを施設活動として評価する場合は、参加人数、会話の有無、本人の「また参加したい」という回答など、観察できる項目を蓄積します。
運営面では、見学・応援・記録など複数の参加方法を用意できますが、本人が望まない役割を求めず、施設の人員と安全基準に合わせて運用します。
実際の現場運用の考え方は、 介護施設で失敗しない「パチンコレクリエーション」運用マニュアル に詳しくまとめています。